index > novel > 時人の鐘 > 2章 『散 花 咲/2』
風は花びらを舞い上げ、大地を撫ぜる。 優しく咲いた白い花は、冷たい手に摘み取られ、楽の音もないままに舞い踊り、散る。 ……花の定め。 「今日も、もの凄い話だった」 きみの才能には呆れる、と予言者は呟いた。皮肉というわけではなく、本当に単純に呆れている。 結局、金花王子にせがまれるまま、空夜は王子の私室で話を聞かせることになった。 空夜が王子に頼まれて語るのは、毎回違う物語だった。本を読むのではなく、空夜が適当にその場で捏造する、まったくの即興で作る物語。一度、王子があまりに退屈だと訴えたときに聞かせて以来、王子殿下は空夜の話をすっかり気に入ってしまったらしい。それから、ことあるごとに、また話を聞かせてくれと言われ続けている。何がそんなに気に入ってしまったのか、空夜には分からない。 「空夜、詩人にでもなったら?」 「うるさい」 呆れたのを通り越して感嘆しているような声で言ってくる友人に、空夜は短く返す。 最初から、全部分かっているくせに。 悠灯のこういうところは相変わらずだ。初めて空夜がこの夕焼け色の瞳の予言者に出会ってからというものずっと、悠灯は空夜に対してそういう態度を取り続けている。空夜の一瞬先の動作、言葉、表情。空夜の未来。先に起こること。悠灯がこの世界に生れ落ちるその前に、すべて理解してきてしまったこと。まるで、なにも知らないかのように。 理由を聞いたことがあった。もうずっと昔、出会って間もない頃だ。 どうして、空夜に対しては、予言者として接しないのか。 悠灯は出会う人間すべてに対して、その能力のもとで声を上げてきた。これから起こること、未来の歴史。誰もが悠灯に、それを尋ねた。だから予言者は、それに応えた。彼にとって、聞かれたことはすべて知っていることだった。だから応えた。 悠灯はひとりの人間である以前に、予言者という機能そのものだった。 しかし空夜に対しては、そうではなかった。 理由を尋ねた空夜に、予言者が答えた言葉は、とても短かった。 ――友達だから。 それだけだった。 悠灯は空夜に、未来を告げない。分かっているはずのことを、口にしない。 (「――みつけた、きみだ」) その言葉を、最初に。 空夜に接する悠灯の言葉は、予言者である以前に、ひとりの友人の言葉であり続けた。 「でも、いいな。やっぱりきみの話はいい」 「もういいから、その話はするな」 「ぼくはまた聞きたいな。明日も頼むよ、空夜」 「嫌だ」 すげなく断る空夜に、悠灯は静かに微笑んだ。 夕食後、日に三回の医師の診察を受けなくてはならない金花王子の部屋を退出し、ふたりは回廊を歩いていた。 琥珀のところに行く、と言っていた時人が、まだ城に戻っていない。おそらく、まだ教会にいるのだろう。 帰るつもりがあるのなら、他の誰かではなく、自分が迎えに行きたいと空夜は思っていた。 (「予言者様は、わたしのことがお嫌いなようなので」) そんなことまで言わせて、時人を教会に追いやったような結果になってしまった。あんな小さい子どもにあんな顔をさせて、子どもらしくないことまで言わせてしまった。せめて、迎えにいってやりたかった。そして予言者は、時人だけが嫌いなわけではないということを教えて、銀色の子どもの気を楽にしてやりたかった。悠灯は確かに時人のことが好きではないかもしれない。だがそれは、特別思い悩む必要のないことなのだと教えてやりたかった。悠灯が嫌いでないものなど、本当に少ないのだから。 それに、まだ聞きたいことがあった。空夜にしか出来ない、『時人』の仕事。 それがなんなのか、聞きたいと思った。 時人を迎えに行く、と告げても、悠灯は何も言わなかった。どうやら、そうするのが空夜の「未来」だったらしい。 教会に向かおうとする空夜を、悠灯の言葉が引き止めた。 「……空夜」 ふと、思いついたように、彼は口を開いた。 「未来を知っているということが、どういう感じのするものなのか、考えたことはある?」 「……なんだって?」 悠灯がそんな話をすることは、あまりない。少なくとも、空夜には。 振り向いて悠灯の表情をうかがう。予言者は夕焼け色の瞳は、気のせいかもしれないが、いつもより宵闇に近い色を浮かべているように見えた。悠灯は続ける。 「たとえ話をしよう。ぼくは生まれる前に、これから起こることすべてが記された本を読んできた。……何度も何度も読み直したように、その内容をよく覚えている」 表情こそ軽く笑みを浮かべてはいるものの、その口調は自嘲そのものだった。悠灯はそこで一旦言葉を切り、空夜に視線を向ける。悠灯のこういう笑い方は、少し、時人のあの鏡に映ったような表情に似ている。感情を間違って読み取ってしまいそうな、贋物の表情。左右が逆さまになったような、どこか見ていて不安になるような、そんな笑顔。 「だから、この先のことが分かる。この物語がどう展開するのか、知っている。何度も読んだ本を、また読み直していると言えばいいかな。空夜、きみは、本を読むのが嫌いじゃないよね。だったら分かってもらえないかな、このたとえ話」 空夜は何も言わなかった。悠灯の言葉に迷いはなく、まるで予め用意されていた脚本かなにかを読み上げているような調子だ。迷いはない。だからそれはきっと、空夜に対して語るべき言葉、語るべく用意された言葉たちなのだろう。それに口を挟むことは出来なかった。何かの意味を持って悠灯が伝えようとしている言葉を、ただ静かに受け止めたいと思った。 「ひとつひとつの細かい描写は覚えていなくても、だいたいの流れは覚えているだろう。なにがどうなるのか、それくらいは説明することもできるだろう。印象深い場面だったら、記憶にもつよく残っているだろう。細かいことについても、読みながら思い出すんだ。ああ、ぼくは、こうなることを知っていた、って。それが予言者。……ぼくだ」 ぼくだ、ともう一度小さく繰り返して、悠灯は黙る。 「……そうか」 話終わった悠灯は、じっと空夜を見ていた。何らかの反応が返ってくるのを待っているようなその顔は、期待しているようでもあり、また、何かを恐れているようにも見える。悠灯がすでに知っているはずの「未来」では、空夜はどんな言葉を語っているのだろうか。それを知れば、悠灯が何を望んでいるのか分かるだろうか。そうなれば、予言者が一番望んでいる言葉を返してやることができるのだろうか。そんなことを思いながら、空夜は口を開いた。 「その『物語』が、おまえにとって優しいものであればいいな」 一瞬だけ、驚いたように目を上げて。 「……何言ってるの?」 呆れたように、悠灯はそう言った。若干、馬鹿にされていると思えなくもないその声音に、空夜は説明を試みる。 「あるだろう、そういう本が。何度も何度も読んで、暗記するほどに繰り返し読んでも、また読み返したくなる本が」 「ないよ。ぼくが面白いと思える話なんて、きみのとんでもない話くらいだ」 またしても空夜の話を引き合いに出そうとする悠灯。冗談のつもりなのか、それとも本気でそう言っているのかは分からない。……おそらく、冗談なのだろうけれども。 空夜は言う。 「……そうか。おれにはある。何度繰り返してもいいと思える物語がある。だから、おれは――おまえの『物語』も、そんなものであればいいと、心から思うよ」 「……」 黙り込んで。 悠灯は静かに、口元を微笑ませた。相変わらずの、皮肉気な表情。だが。 その顔には、映し出された鏡像を見せられているような不安は感じられなかった。 少し安心して、空夜は更に続けた。 「おまえ以外の誰にも理解できないほど、それは辛いものなんだろうと思う。予言者であるということが、どんなことなのか。きっと想像も出来ないほど、重いものなんだろうと思う。その重みをひとりで抱えていることが、嫌になることもあるだろう。……そういうときは、おれに話せばいい」 「話したところで、何も変わらないよ。そういうものなんだから」 「おまえの気が、楽になることもあるだろう」 「……うん。ありがとう」 そう言って、悠灯は頷いた。 中庭から回廊を通り抜ける夜の風が、その茜色の髪を揺らす。 その風が吹くのと、同時に。 空夜には聞かせるつもりのないような小さな声で、予言者はひそやかに呟いたようだった。 「……でも、話さないよ、きみには」 夜風に乗せられて、かすかに聞こえる、小さな呟きを残して、悠灯は空夜に背を向けた。 「きみだけは、ぼくの知る『未来』に触れないでいて欲しいから」 夜の教会は、ひっそりと寝静まった街の風景の中に、ぼんやりと明かりを点していた。 この教会は、決して動きを止めてはならない、世界の時間を刻む時計を守る場所だ。だから、決してその明かりが消えることはない。そしてその門が閉ざされ、入ろうとする者を拒むこともない。 それはある意味で、物騒な話なのかもしれない。門番もいなければ、鍵を掛けることもしない。一日に数回、城から派遣されてくる兵たちが見回りに来る程度だろう。物騒な話なのかもしれない、が。 (……そういう、問題でもないか) 門番や見張りというのはつまり、泥棒や、この国の王権の象徴でもある時計を破壊しようと企むような、そういった連中を中に入れさせないために必要とされるものだ。それならば、心配ない。泥棒が盗めるようなものは後でまた揃えれば良いだけのことだし、時計は「時人」以外は触れることすら叶わない神秘の代物だ。それにこの場で時計を守る任についている神父は、眠りもしなければ休息も必要としない。ただ時計の傍に、常にある存在として控えている。 あの男がいる限り、この教会に守りなど必要ないのだ。 鍵の掛かることのない扉を押し開けて、空夜は大聖堂へと足を踏み入れる。 聖堂内に、人の気配はしなかった。 「……時人?」 呼びかけてみる。 静かな聖堂内に、空夜の声が微かにこだまする。 その名前に反応したかのように、カツン、と時計の針が静寂を刻んだ。 空夜は時計の正面に立ち、文字盤を見上げる。 世界の時計。 (「あなたになら、分かるはずです。空夜。これは、ほんとうにすごい……!」) 時人のその言葉を思い出す。思い出して、改めて時計を見上げてみる。 しかしそれは、やはり何か特別なものを感じさせはしなかった。大きな、世界の時間を刻むと言われている時計。 時人が言った言葉が間違っているのか、何も感じない空夜の方が間違っているのか、それは分からない。 しかし、少年は告げた。空夜にしか出来ないことがあると。「時人」として、空夜にしか出来ないことがあると。 できそこない、と言われたこの自分にも、まだ、出来ることがあると。 それを聞きたい。空夜は思考を止める。時人を探さなければ。 そう思い、時計から視線を外した、その時。 「ほら、わたしの言った通りだった」 いつものように、その男は聖堂の奥の部屋から姿を現した。 扉を開けて、すぐに時計の元に立つ空夜を見つけたらしい。 「琥珀。……時人は」 「ここに、います」 尋ねた空夜の声に返事をしたのは、所在を尋ねられた少年本人の声だった。 神父が扉を完全に開き、一緒に居たらしい時人を先に聖堂内に通してやる。 時人はどこかきまりが悪そうに、肩を縮めていた。 「遅くなってすまない。迎えに来た」 空夜がそう言うと、時人は小さな声で、すみません、と謝った。 そんな様子の時人を見て、琥珀が笑う。 「心配することはないと言ったでしょう、時人。彼はあなたを放っておけるような子ではありませんよ」 「心配していたわけではありません! ……違います」 琥珀の言葉を否定する時人。首を振るその動作に合わせて、銀の髪が揺れる。 空夜はその頭に手を乗せた。 「さっきは、悪いことをした。……ごめんな」 「悪いこと?」 「おまえを追い払うようなことをしてしまった」 そう言って謝る空夜に、時人はまた、首を振った。 「予言者様は、わたしのことがお嫌いなのだと思います。仕方のないことなんです」 空夜が謝るのは間違いだと、まっすぐに見つめる銀の瞳が否定する。 「だってあの方にとって、空夜はとても大切なお友達なのでしょう?」 「あいつにとっておれが、とても大切かどうかは知らない。でも、そうだな。友達だよ」 「だから、わたしが嫌われても仕方ないんです。それに、お城の他の人のように、ただ優しくしてくれるより、理由があって嫌われるほうが、ずっと楽だ」 「……一体、なんのことを言ってるんだ?」 「わたしが、空夜を奪ってしまうから」 思いつめたような顔で、時人はもう何度目になるのか、同じ言葉を繰り返す。 「……だから、予言者様は、わたしがお嫌いなんです」 その声は暗く、どこか悲しそうに、静かな聖堂に響いた。 そう言えば。空夜は思い当たる。 時人がこの街に来た最初の日に、悠灯も同じことを言っていた。 (「きみも取っちゃうし」) そう言った悠灯にも、全身で恐縮を表現している時人にも。 (――なんなんだ、一体) 一体、自分がどういう存在に見られているのか、ふと聞いてみたい気分になった。 否定の意味を込めて、ため息をひとつ。 「……帰ろう、時人」 差し出した空夜の手を、時人がそっと握った。その手は驚くくらいに温かくて、そして小さい。銀色の容貌、鏡のような表情。つめたく時を刻む銀時計にも似たこの存在は、しかし確かにやわらかな手のひらを持つ子どもだった。 「お邪魔しました。また、来てもいいですか?」 琥珀に尋ねる時人。問われた琥珀は、微笑んで頷いた。 「いつなりと。わたしは、どこにも行かぬ身です」 「――あの、ひとつ、気になっているのですが」 機を得た、とばかりに、時人が続ける。 微笑を絶やさぬのは、琥珀の常だ。そしてこの男の常というのならば、それは時の常。変わらずに存在する微笑ならば、それはひとつの表情を永遠に留め続ける仮面のようなものだろう。 少なくとも琥珀にとっては、そういうものなのだろう。 神父は表情を変えずに、どうぞ、とその先を促した。 「予言者様が、『すべての未来をその身に引き受けるもの』だということは理解できます。あの方は確かに、未来を知っている。……わたしが何をしようとしているのか、知っている。ですが琥珀、あなたは?」 そこで一旦言葉を切り、時人は神父服の男を見上げた。 見上げられた琥珀は、続きの言葉を待っていることを示すように、何も言わずに少し首を傾げた。 「……いろいろと、考えてみました。あなたが、わたし以前の『時人』を知っているということや、そして『すべての過去を引き受けるもの』であるということの意味。予言者様が未来を知っているのと同じように、あなたは過去を知っている。そうなんですね?」 「わたしが知っているものがあるとすれば、それは過去というよりも、ただの記憶です」 「記憶?」 「そう。予言者殿は間違いなく、未来を知っています。それは他の言葉で説明しようのない事実だ。しかし、そうですね。わたしが彼と同じように過去を引き受けているというのは、少しおかしな言い方かもしれません。言い直しましょう。わたしは、わたしの過去だけを知っています。記憶として」 「それじゃあ」 少し甲高い声をあげて、時人の空夜の手を握る指に、少し力が込められた。 「あなたが、これまでの『時人』を知っているというのは、つまり本当に」 「直接お会いしました。……時人、今あなたと空夜が立っているその場所で。そして、時計を巻き戻すそのときにも、わたしはここに立ち、彼を見送りました。――鐘の音も。はじまりの鐘の音も、この耳で聞きました」 「時計を巻き戻すのは、数百年に一度のはずです。それに、三度も立ち会ったと言うのですか!」 その通りです、と微笑んで、琥珀は記憶をそらんじるように、軽く宙を見た。 「あなたの前の『時人』にお会いしたのが、もう、300年ほど前になりますね」 どうということのない口調で、琥珀は語る。教会に集まる子どもたちに、彼はよく昔話を語って聞かせている。それと全く変わらない調子で語る神父は、それが彼自身にとって特に重要なことではないことを暗に示していた。何百年前のことを語ろうと、昨日のことを語ろうと、琥珀にとってその意味は大して変わらないのだ。もしかしたら、明日や数百年先のことでさえも。 「わたしは常に、この時計の傍らに在るものです。生きるのではなく、ただ、在るもの。 死ぬことも老いることもないこの身を生きていると騙るのは、生あるものに対する冒涜になりましょう?」 硬く冷たい音が響き、時計の針が時を刻む。 「過去を引き受ける身と言えば、聞こえが良すぎますね。 実のところ、わたしはただ長い時間この世界に居るというだけの話です。 時人、あなたが時間に愛されているように、そしてその強すぎる抱擁から抜け出せないために、空夜に手助けして貰わなくてはならない、そのことのように。わたしは、世界に時が流れる限り、存在し続けるものです」 言葉の終わりを縁取るのは、相変わらずの微笑み。 琥珀の話は、そこで終わったようだった。 最初の日に言っていたことだが、琥珀は時人が、何か空夜に手助けして貰わなくてはならない事情を既に知っている。悠灯もそれらしいことを言っていた。知らないのは自分ばかりだな、などとふと思う。 時人は、何かを考え込んでいるようにじっと床を見ていた。その手は、どこか深い穴に落ちるのを恐れているかのように、かたく空夜の手を握ったままだ。 帰ろう、と、もう一度空夜は声をかけた。時人は黙ったまま、小さく頷く。 それを見守るように、こちらを見ている神父に気付く。 「琥珀」 「――おや、名前で呼んだ」 珍しい、と付け加えて、琥珀は空夜の言葉を待つように笑った。 「……悠灯の様子が、少しおかしい」 「それで?」 「あいつは、おれに言わないことでも、おまえになら言うこともあるだろう。なにか問題を抱えているようなら、頼む」 「わたしも予言者殿に嫌われているんだよ、空夜。知らないとは言わせない」 「それでも、頼む」 「……ああ、分かった。もし、彼が何か言ってくるようであれば、力になろう。何が起こるのかは、分からないけれどね」 「それが分かっているから、あいつは少しおかしいんだと思う。おれには、何も出来ないから」 予言者であること。それがどんなことなのか、なんの脈絡もなく説明を始めた友人の様子は、明らかに普段のものとは違っていた。 心配などすることではないのかもしれない。空夜は心配するような立場にいる者ではないのかもしれない。 それでも、何かをしてやりたいと思った。 もう一度、分かった、と了承の意を示して、琥珀は時人の頭を撫でる。 「残りの時間には、まだ猶予がありますね?」 その言葉に、時人は懐からあの小さな銀時計を取り出す。それを琥珀に向けながら、はい、と少年は頷いた。 それを確認したのか、していないのか。それを聞いて安心したのか、何とも思っていないのか。まだ流れる時があることを嬉しく思うのか、忌まわしく思うのか。 何も読み取れない、白紙に似た微笑をたたえるその表情は穏やかで、とても静かだった。 教会を出る二人を見送る神父は、ただ静かに時計の元に立っていた。 たとえ時人が時計を巻き戻し、世界がまた数百年の時間を与えられたとしても。 種から育てた花が咲き開き、枯れ落ち、また新しい種子を落としても。 風が世界を巡り、また同じ場所に還ろうとも。 彼の周囲に、時は流れない。
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